キダチアロエ(Aloe arborescens Mill.)は、ススキノキ科(Asphodelaceae)に属する多年生の多肉植物で、1768年にフィリップ・ミラーによって記載されました。原産地は南アフリカですが、現在では観賞用として、また民間薬や化粧品の原料として世界各地で栽培されています。最も目を引くのは低木状の姿です。枝分かれした茎は高さ5メートルに達することもあり、その先に肉厚で披針形の葉がロゼット状につきます。
アフリカの伝統医療では、消化器の不調から皮膚の炎症まで、古くから幅広く用いられてきました。近年の研究では、アントラキノン類、多糖類、ビタミン、ミネラルを含む豊かな植物化学組成が明らかになっています。本種はしばしばアロエベラと比較されます。一般向けの資料では有効成分がより濃いと説明されることがありますが、引用されている比較研究は一定の倍率を裏づけていません。それでもこの評判が、植物療法や製薬分野からの関心を高めてきました。
アロエは世界に500種以上を含む属で、多くがアフリカ大陸やアラビア半島の乾燥地帯に自生しています。

キダチアロエの各国語名と俗称
- 日本語:キダチアロエ、木立アロエ。
- 英語:candelabra aloe、kidachi aloe、Krantz aloe、mountain bush aloe、torch aloe、tree aloe。
- スペイン語:aloe arbóreo、aloe candelabro、candelabro、cuerno de carnero、planta pulpo、sábila candelabro africano。
- ポルトガル語:babosa、babosa-candelabro、babosa-de-natal(ブラジル)、aloé-candelabro、aloé-dos-cem-anos、vela(ポルトガル)。
- フランス語:aloès arborescent、aloès candélabre、aloès de Krantz、corne de bélier。
- イタリア語:aloe a candelabro、aloe arborescente、aloe del Padre Zago。
- ドイツ語:Baum-Aloe、Fackel-Aloe、Kandelaber-Aloe、Krantz-Aloe。
キダチアロエの学名シノニム
本種の正名は Aloe arborescens Mill. です。ただし植物学の歴史のなかでは、ほかにもいくつかの名称が提案され、今日ではシノニムとして扱われています。Aloe natalensis J.M.Wood & M.S.Evans、Aloe arborescens var. milleri A.Berger、Aloe perfoliata var. arborescens (Mill.) Aiton などがそれにあたります。World Flora Online や Plants of the World Online(POWO)といった国際的な分類データベースは Aloe arborescens Mill. の有効性を確認しており、本種の分類上の位置づけは安定しています。
植物分類:アロエの属するススキノキ科
キダチアロエはススキノキ科(Asphodelaceae)ツルボラン亜科に属し、この亜科には Aloe 属のほか Asphodelus 属や Kniphofia 属が含まれます。いずれも草本または低木状で、多肉質のものが多く、葉はロゼット状につき、花序は目立ちます。この科はアントラキノン類や多糖類をはじめとする生理活性成分を含むことで知られ、それが多くの種の薬用としての評価を支えてきました。分布はほぼ世界規模ですが、種の多様性が最も高いのは南部アフリカです。
キダチアロエの利用部位
- 樹液(乳液。現在は内服が推奨されない。注意事項を参照)
- 葉(ゲル。黄色い乳液は取り除く)
- 花
キダチアロエの民族植物学的・伝統的な用いられ方
- 潰瘍の手当て
- 各種の炎症
- 抗腫瘍・抗がん作用(研究段階。前臨床データ)
- 消化不良と胃炎
- 便秘への対処(乳液の瀉下作用。現在は内服が推奨されない)
- 免疫の調整
- やけどと皮膚の傷の緩和
キダチアロエの薬理的特性
- 血糖降下 (血糖値を下げる)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 抗炎症 (炎症をやわらげる)
- 抗潰瘍 (潰瘍から守る)
- 抗がん (研究段階。前臨床データにとどまり、確立した臨床応用はない)
- 抗菌 (細菌の増殖を抑える)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 抗酸化 (活性酸素に対抗する)
- 抗真菌 (真菌の増殖を抑える)
- 抗糖尿病 (血糖の管理を助ける)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- コレステロール低下 (コレステロール値を下げる)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 消化促進 (消化を助ける)
- 神経保護 (神経系を守る)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 心保護 (心臓を守る)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 創傷治癒 (傷の治りを助ける)
- 鎮痛 (痛みをやわらげる)
- 免疫調整 (免疫の働きを整える)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
キダチアロエの植物化学プロフィール
- アミノ酸(必須アミノ酸を含む)
- アロエニンA(フェノール配糖体)
- アントラキノン類(アロインA、アロエエモジン)
- クロモン類
- サポニン
- 脂肪酸
- 多糖類
- 配糖体
- ビタミン類(A、B1、B2、B3、B6、C、E、葉酸)
- フラボノイド
- ミネラル(亜鉛、カリウム、カルシウム、セレン、鉄、マグネシウム)
キダチアロエの調製法と摂取形態
- 液体エキス
- カプセル剤
- 乾燥エキス
- 外用のクリーム・ジェル
- 湿布
- 浸出液(ゲル。乳液を除く)
- ジュース(葉のゲルを用いる)
- チンキ剤
他の薬用植物との相乗的な用いられ方
抗酸化作用の補強
キダチアロエは、抗酸化成分に富む植物とも組み合わせやすい素材です。緑茶(Camellia sinensis)やアサイー(Euterpe oleracea)との併用がその例にあたります。アロエのフラボノイドと多糖類に、緑茶のカテキンとアサイーのアントシアニンが加わる形です。植物療法では、酸化ストレスがかかる場面での幅広い支えとみなされてきました。ただし慢性疾患を防ぐと示されたわけではなく、そこまで言い切ることはできません。
消化への支え
消化を支えたいときには、カミツレ(Matricaria chamomilla)やペパーミント(Mentha × piperita)と合わせる方法が伝統的に知られています。胃が敏感なとき、食後に重さが残るとき、腸に軽い刺激感があるときなどが想定される場面です。アロエゲルの抗炎症作用と創傷治癒作用が、カミツレの鎮静的な性質とペパーミントの鎮痙作用を補います。三者を組み合わせることで、単独で用いるよりも支えの幅が広がると考えられてきました。
免疫の支え
もう一つの古典的な組み合わせは、ムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)とキバナオウギ(Astragalus membranaceus)を加えるものです。感染を受けやすい時期に用いられることが多く、アロエゲルの多糖類が他の二種の有効成分と併せて働くと説明されます。もっとも、この種の配合に関する研究はなお進行中で、これまでの知見は主に実験室での作業と小規模な試験から得られたものです。
キダチアロエのレシピと利用上の注意
アロエジュース(免疫の支えに)
材料:Aloe arborescens の葉1枚(約100g)、りんご1個、水1杯(200ml)、レモン半個分の果汁。
作り方:葉をよく洗い、とげのある縁と黄色い基部(乳液)を切り落とします。葉を切り分け、内側の透明なゲルだけをかき出してください。緑色の外皮は捨てます。ミキサーにアロエゲル、切ったりんご、水、レモン果汁を入れ、なめらかになるまで撹拌します。できあがったらすぐに飲みきってください。飲む前に、黄色い残りがグラスに入っていないか確かめます。内服用の調製である以上、妊娠中と授乳中、小さな子ども、そして腸閉塞、虫垂炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群のある方には適しません。
アロエチンキ(消化の支えに)
材料:Aloe arborescens の生のゲル50g(乳液を除いたもの)、70%の穀物アルコール250ml。
作り方:葉を洗い、とげのある縁を切り落とし、皮をむいて内側の透明なゲルだけを取り出します。緑色の外皮と、切り口からしたたる黄色い樹液は捨ててください。刻むのはゲルだけにし、そこから50gを使います。外皮ごと刻むと、アロインの束がそのままチンキに入り込んでしまうためです。刻んだゲルを遮光性のガラス瓶に入れ、穀物アルコールを注ぎます。しっかり密閉し、冷暗所で14日間置き、毎日振り混ぜてください。その後こして、遮光瓶で保存します。用いるときは水で薄めて20〜30滴を、1日2〜3回、食前に、苦味健胃薬としてのみ、しかも常用せず折にふれて使います。この調製を下剤として用いてはいけません。腸閉塞、虫垂炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群のある方、妊娠中の方、授乳中の方、子どもには禁忌です。またアルコール性の調製は胃炎には適しません。使用前に医療者に相談してください。
やけどの湿布
材料:Aloe arborescens の生の葉1片。
作り方:葉を洗い、縦に切り開いてゲルを露出させます。清潔にしたやけどや傷に葉の内側を直接あて、ガーゼか軽い包帯で固定してください。湿布は4〜6時間ごとに取り替えます。ゲルには抗炎症、鎮痛、創傷治癒の性質があり、皮膚の回復を支え、一度のやけどや小さな傷の痛みをやわらげます。二度のやけどについては医師の診察が必要です。
キダチアロエに関連する療法
機能性栄養
機能性栄養の分野では、キダチアロエの葉のゲルがジュースやスムージー、サプリメントに用いられています。注目されるのは主に多糖類と、消化のここちよさです。ただし割合は知っておく必要があります。ゲルのおよそ99%は水分です。含まれるビタミンやミネラルは微量にとどまり、1日の必要量を満たすには到底足りません。つまり本種は栄養の供給源ではなく、限られた役割を担う補助的な素材ということになります。
ホメオパシー
この属の古典的なホメオパシー薬は Aloe socotrina で、北東アフリカ産の種の濃縮汁から調製されます。消化器に関するよく知られた指標は、そちらに由来するものです。Aloe arborescens そのものには、マテリア・メディカのなかに確立された薬像がありません。ポテンシーや投与間隔の選択は、その人の症状全体をふまえて、資格のあるホメオパスが判断すべき事柄です。
臨床植物療法
臨床植物療法では、規格化されたキダチアロエのエキスが免疫の調整や消化の支えを目的に用いられています。腫瘍領域での研究も進められていますが、この分野ではいかなる使用も医師の管理を要し、治療に取って代わるものではありません。用量と摂取形態は、患者の状態と医薬品との相互作用の可能性をふまえ、医療者が個別に調整します。研究はなお途上にあり、標準化された臨床上の適応は今のところ確立していません。
キダチアロエの禁忌と副作用
医薬品との相互作用
本種は一部の医薬品に影響を及ぼすことがあります。瀉下作用があるため、経口薬の吸収を妨げたり、利尿薬の作用を強めてカリウムの喪失を招いたりする可能性があります。ジギタリス製剤、副腎皮質ステロイド、糖尿病治療薬を用いている方は、低カリウム血症や血糖値の変動の危険があるため、慎重に、かつ医師の管理のもとでのみ使用してください。医療者への相談は欠かせません。
個別の禁忌
Aloe arborescens は、妊娠中および授乳中の女性、小さな子ども、重い腎疾患や心疾患のある方、さらに腸閉塞、虫垂炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群のある方には禁忌です。アントラキノン類は子宮の収縮を促し、腸の炎症性の状態を悪化させることがあります。外用は概して安全ですが、深い開放創に対しては専門家の指導なしに用いるべきではありません。
副作用
Aloe arborescens を過剰に、あるいは長期にわたって摂取した場合、とりわけ葉の外皮に含まれる黄色い乳液を摂った場合には、副作用が生じることがあります。多いのは腹部のけいれん、下痢、電解質バランスの乱れで、いずれも強い瀉下作用によるものです。まれに消化管の刺激が起こります。内服の前に乳液を取り除くことが不可欠なのはそのためです。感受性には個人差があるため、経過を見ることが望まれます。さらに外皮のヒドロキシアントラセン誘導体、なかでもアロインとアロエエモジンは、瀉下作用にとどまりません。欧州の評価はこれらを遺伝毒性ありと判断し、懸念のない1日摂取量を設定しませんでした。また Aloe の全葉エキスは、IARC によりヒトに対して発がん性の可能性ありと分類されています。ゲルを厳密に分けること、内服を長引かせないことが求められるのは、こうした理由によります。
キダチアロエの豆知識
再生する力
物理的な損傷からの立ち直りの早さは、この植物の際立った特徴です。切られた茎はふたたび芽を出し、傷ついた葉は自ら傷口をふさぎます。この力は古くから人の想像力をかき立ててきました。ゲルが傷ややけどに用いられてきたことと無関係ではないでしょう。もっとも両者の結びつきは科学的というより象徴的なものですが、本種の評判の一端を説明してはいます。
長い寿命と丈夫さ
本種は寿命の長さと丈夫さで知られています。やせた土地でも育ち、長い乾期にも大きな傷みを見せません。肉厚の葉に水を蓄えるため、乾燥した土地でも持ちこたえます。この性質があるからこそ、条件の大きく異なる庭や景観のなかで扱いやすい植物となり、観賞用としても伝統的な用途の面でも重宝されてきました。
文化的な意味
文化によっては、キダチアロエは薬用植物という以上の存在です。アフリカの一部の伝統では、災いを遠ざけ幸運を招くために家のそばに植えられてきました。庭や敷地に置かれる理由は、装飾や実用だけではないということです。その意味づけは、この植物の力と価値をめぐる古い観念に根ざしています。
キダチアロエについてのよくある質問
キダチアロエは内服しても安全ですか
用いる部位と、摂る人によって答えが変わります。葉の内側の透明なゲルは、ジュースや消化用の調製に使われる部分で、多糖類はここから得られます。一方、外皮からしみ出す黄色い乳液は完全に取り除かなければなりません。そこに含まれるヒドロキシアントラセン誘導体、なかでもアロインには強い瀉下作用があり、欧州の評価はこれらを遺伝毒性ありと判断したうえで、懸念のない1日摂取量を設定しませんでした。内服は、妊娠中と授乳中、小さな子ども、そして腸閉塞、虫垂炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群がある場合には禁忌です。それ以外の場合も、摂取は折にふれてにとどめ、事前に医療者に相談してください。
キダチアロエとアロエベラは何が違いますか
どちらも薬用としての評判をもつアロエですが、違いははっきりしています。Aloe arborescens はより低木状に育ち、茎が枝分かれし、葉は細めです。一般向けの資料では有効成分がより濃いと説明されることがありますが、引用されている比較研究は一定の倍率を裏づけていません。アロエベラ(Aloe barbadensis Mill.)のほうが栽培も利用も広く、葉は幅広で、株はよりコンパクトにまとまります。どちらにも価値がありますが、一部の治療用の調製ではキダチアロエが選ばれてきました。
キダチアロエは家庭で育てられますか
丈夫で手のかからない植物です。水はけのよい土と十分な日照を好みますが、半日陰にも耐えます。ふやし方は茎ざしか、株元から出る子株を分ける方法が一般的です。寒冷地では強い霜から守ることが大切になります。水やりは控えめにし、土が乾いてから次を与えてください。過湿が続くと根が傷みます。手入れが適切であれば、大きく育ち、よく花をつけます。
キダチアロエは肌にどのような利点がありますか
肌に対しては、抗炎症、創傷治癒、保湿の性質が評価されてきました。ゲルは軽い日焼け、小さな傷、かぶれ、虫さされなどに古くから塗られてきた素材で、こうした場面での症状の緩和が、現在得られている研究でも報告されています。肌を落ち着かせ、赤みをやわらげる働きが期待されます。生のゲルのまま、湿布として、あるいはクリームやローションに配合して日々の手入れに使うことができます。ただし広い範囲や深いやけど、なかなかふさがらない傷、感染の兆しがある場合は、家庭での手当てではなく医師の診察が必要です。
ご注意: 本コンテンツは情報提供を目的としており、医療専門家の助言に代わるものではありません。薬用植物を使用する前に、特に妊娠中、授乳中、または薬を服用中の場合は、医師または専門家にご相談ください。
参考文献と科学的研究
査読済み科学研究 (1)
- PEER2015 Singab, A. N. B., El-Beshbishy, H. A., & Yonekura, T. (2015). A Systemic Review on Aloe arborescens Pharmacological Profile: Biological Activities and Pilot Clinical Trials. Phytotherapy Research, 29(12), 1877-1889.
補足資料 (6)
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