Aleurites moluccanus (L.) Willd. / ククイノキは、日本語で石栗(いしぐり)、ハワイアブラギリ、キャンドルナッツとも呼ばれる、トウダイグサ科の高木です。1753年にカール・リンネによって記載されました。原産地は東南アジアで、薬用と食用の両面にわたる幅広い用途から、現在では熱帯地域の広い範囲で栽培されています。油分に富む種子は伝統医療でさまざまな目的に用いられてきましたが、生のままでは毒性をもつ点に注意が必要です。
民間療法では、喘息、発熱、痛み、炎症など、実にさまざまな不調に対してククイノキが用いられてきました。種子から搾った油はその性質が評価され、関節の痛みや皮膚のトラブルに外用されます。近年の科学研究は、この植物に含まれる生理活性成分を詳しく調べてきました。その結果、伝統的な用法の一部が裏づけられ、治療上の可能性も示されています。ただし生の種子がもつ毒性のため、取り扱いにも摂取にも慎重さが求められます。
Aleuritesは熱帯アジア原産のトウダイグサ科の属で、代表種であるククイノキ(Aleurites moluccanus)を含みます。

ククイノキの一般名と各国での呼び名
- イタリア語:noce di candela。
- インドネシア語:kemiri。
- 英語:candleberry、candlenut、country walnut、Indian walnut、kukui、varnish tree。
- スペイン語:avellano、nogal de la India、nuez de la India。
- ドイツ語:Lichtnussbaum。
- 日本語:キャンドルナッツ、ククイノキ、ハワイアブラギリ、石栗。
- ハワイ語:kukui。
- フランス語:noix de Bancoul、noyer des Moluques。
- ポルトガル語:castanha-purgativa、nogueira-da-Índia、noz-da-Índia。
- マレー語:buah keras。
ククイノキの植物学的シノニム
Aleurites moluccanus には、植物分類学の歴史のなかで用いられてきたシノニム(異名)がいくつも存在します。よく知られているものとしては、Aleurites javanicus Gand.、Aleurites moluccana、Aleurites pentaphyllus Wall. ex Langeron、Aleurites remyi Sherff、Aleurites trilobus J.R.Forst. & G.Forst.、そして Jatropha moluccana L. などが挙げられます。現在、多くの植物分類の権威が認める学名は Aleurites moluccanus ですが、これらのシノニムを知っておくことは、正確な研究のためにも、時代や地域の異なる資料のなかで本種を見分けるためにも欠かせません。
植物分類:Aleurites(トウダイグサ科)
Aleurites moluccanus はトウダイグサ科に属します。この科は約300属7500種を擁する大きく多様な被子植物のグループで、草本や低木から高木まで形態の幅が広く、多くの種が乳液を含むことで知られています。
トウダイグサ科は主として熱帯および亜熱帯に分布し、多様性の中心は南アメリカとアフリカにあります。この科には経済的に重要な植物も少なくありません。たとえばキャッサバ(Manihot esculenta)やパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)がその代表で、ほかにも薬用や観賞用として価値のある種が数多く含まれます。
ククイノキの利用部位
- 果実
- 種子
- 樹皮
- 葉
ククイノキの民族植物学的・伝統的な利用法
- 炎症の緩和
- 潰瘍の治療
- 関節炎と関節痛の治療(油の外用)
- 傷の治療
- 下痢の治療(葉の煎じ液)
- コレステロール低下(伝統的記録。この目的で種子を摂取することはブラジルでは禁止されており、重篤な中毒を引き起こしてきた)
- 湿疹の治療
- 頭痛の緩和
- 赤痢の治療(樹皮)
- つわりの緩和(歴史的記録。妊娠中の使用は禁忌)
- 乳児の口腔感染症の治療(民族植物学的記録。乳児への使用は現在では推奨されない。禁忌の項を参照)
- 発熱の緩和
- 日焼けの治療
- 便秘の治療(伝統的記録。生の種子は有毒であり、内服は推奨されない)
- 淋病への対処(歴史的記録。淋病は医師による抗生物質治療を要する)
ククイノキの薬理作用
- 胃粘膜保護作用 (胃の粘膜を保護する)
- 抗炎症作用 (炎症を抑える)
- 抗がん作用 (実験室での研究における抗腫瘍の可能性)
- 抗菌作用 (細菌に対抗する)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 抗酸化作用 (活性酸素に対抗し、細胞の老化を防ぐ)
- 抗侵害受容作用 (痛みへの感受性を低下させる)
- 抗糖尿病作用 (血糖値の調整を助ける)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 殺虫作用 (昆虫に対する活性をもつ)
- 脂質低下作用 (血中脂質の値を下げる)、臨床的有効性は未確立の伝統的用法
- 鎮痛作用 (痛みをやわらげる)
ククイノキの詳細な植物化学プロファイル
- サポニン
- 脂肪酸
- トキサルブミン
- フラボノイド(2″-O-ラムノシルスウェルチシン)
- ホルボール
ククイノキの調製法と使用形態
- 油(種子)
- 湿布
- 浸剤(葉)
- 煎じ液(樹皮、葉)
他の薬用植物との相乗効果
痛みと炎症をやわらげる組み合わせ
ククイノキは、抗炎症作用や鎮痛作用で知られる植物と組み合わせることで、その働きを補強できると考えられています。たとえば ウコン(Curcuma longa)やショウガ(Zingiber officinale)と合わせると、炎症性の不調や関節の痛みに対して追加の支えとなり得ます。こうした組み合わせが目指すのは相乗効果であり、それぞれの植物に含まれる生理活性成分が協働して、体内の炎症経路や痛みの経路に働きかけるという考え方にもとづいています。
消化のサポート
カミツレ(Matricaria chamomilla)、ペパーミント(Mentha × piperita)、フェンネル(Foeniculum vulgare)といった駆風作用のある消化促進の植物は、ガスの滞留、腹部の張り、胃腸の不快感をやわらげるのに役立ちます。ただし、これらは単独で用いるべきものです。種子の毒性があるため、ククイノキは内服の調製には入りません。
ククイノキのレシピと使用プロトコル
皮膚の炎症に用いる湿布
材料:ククイノキの生葉、ぬるま湯。
作り方:生葉をすりつぶしてペースト状にします。必要に応じてぬるま湯を少量加え、扱いやすい固さに整えてください。腫れや炎症のある部位の健常な皮膚にペーストを塗り、開いた傷、やけど、粘膜は避けます。その上を清潔な布で覆ってください。30分から1時間おき、1日1〜2回繰り返します。この伝統的な湿布は、刺激を鎮め、局所の炎症をやわらげる助けになると考えられています。
関節の痛みに用いるマッサージオイル
材料:ククイオイル10ml、ショウガ精油2滴、ラベンダー精油2滴。希釈濃度はおよそ2%になります。
作り方:遮光ガラスの瓶で精油を丁寧に混ぜ合わせます。痛みのある関節に少量をとり、完全になじむまでやさしくマッサージしてください。1日2〜3回使用します。このマッサージオイルは、関節の痛みや炎症をやわらげ、心地よさと安らぎをもたらす助けになると考えられています。
ククイノキに関連する療法
アロマテラピー
ククイオイルはアロマテラピーにおいて、主にマッサージのキャリアオイルとして使われます。肌をうるおし、やわらげる性質で知られており、乾燥肌や湿疹をはじめとする皮膚の悩みに向けた化粧品や療法用の処方によく登場します。化粧品に用いられる精製されたククイオイルは、健常な皮膚であればおおむねよく受け入れられます。とはいえ、広い範囲に使う前に狭い部位でパッチテストを行うのが賢明です。また、このオイルは生の種子や未精製の粗油とは区別して考える必要があります。
植物療法
植物療法においてククイノキは、抗炎症作用と鎮痛作用の点で評価されています。一方で、生の種子がもつ下剤としての働きは治療上の利点には数えられません。それは激しい瀉下であり、中毒の兆候だからです。この植物はエキスやチンキといった形で用いられますが、生の種子の毒性があるため、つねに慎重さが欠かせません。現代の植物療法では、安全性と有効性を確保するためにエキスの規格化が進められており、毒性の低い部位や有用な生理活性成分を多く含む部位に重点が置かれています。
ククイノキの禁忌と副作用
毒性と注意事項
Aleurites moluccanus の生の種子は、サポニン、ホルボールエステル、トキサルブミンを含むため有毒です。摂取すると、嘔吐、激しい腹痛、激烈な下痢を引き起こすことがあります。ブラジルをはじめとするいくつかの国では、健康被害のおそれから、痩身目的での種子の販売が禁止されてきました。加熱処理、すなわち加熱調理や焙煎はタンパク質成分の毒性を下げ、一部の文化では種実を食用に供せるようにします。それでもなお、摂取は細心の注意を払い、少量にとどめる必要があります。
個別の禁忌
- アレルギー:トウダイグサ科の植物、またはククイノキの成分に対して過敏症が知られている方は、使用を避けてください。
- 医薬品との相互作用:下剤、利尿薬をはじめ、消化管や肝臓・腎臓の機能に働きかける薬剤と相互作用する可能性があります。ほかの薬を服用している場合はとくに、使用前に医療専門職へ相談してください。
- 慢性疾患:肝臓、心臓、腎臓に疾患のある方は、毒性がこれらの状態を悪化させるおそれがあるため、種子の摂取を避けてください。
- 小児と高齢者:幼い子どもと高齢者では、激しい瀉下作用と毒素への感受性の高さから、使用を避けるべきです。
- 妊娠中と授乳中:通経作用の可能性があること、また胎児や乳児に及びうる毒性のため、使用は禁忌です。
ククイノキにまつわる豆知識と歴史
ハワイにおける古来の利用
古代ハワイにおいて、kukui の名で知られたククイノキは、文化的にも実用的にもきわめて重要な植物でした。種実は灯りをとるために燃やされ、ヤシの葉の葉軸に一列に刺して一つずつ火を灯すことで、同時に時間を計る目安にもなりました。種実から採れた油は石造りのランプを満たしました。
さらにハワイの人々は、この木の殻や葉、花からレイ(首飾り)をつくり、炭化させた種実から入れ墨用の顔料を、油からはニスを得ていました。漁師は種実を噛んで水面に吐き出し、表面張力を破って水中の見通しをよくしたと伝えられます。1959年5月1日、kukui はハワイ州の州木に定められ、光明と守り、そして平和の象徴とされています。
アジア料理における重要性
生の種子には毒性があるものの、ククイノキは東南アジアの多くの料理に欠かせない食材です。とりわけインドネシアとマレーシアでは kemiri の名で親しまれています。種実はふつう加熱調理や焙煎によって毒素を無害化したうえで、ソースやカレーにとろみをつけるために使われ、料理に独特の風味と口当たりを与えます。ジャワ島では、野菜とご飯に添える濃厚なソースの土台となっており、この地域における汎用性と食文化上の重みをよく物語っています。
ククイノキに関するよくある質問
ククイノキは食べても安全ですか。
ククイノキの生の種子は有毒であり、食べるべきではありません。摂取すると、嘔吐や下痢といった重い副作用を引き起こすことがあります。一部の文化では、加熱調理や焙煎を経てから種実を食べる習慣があり、これによって毒性は低下します。ただし、専門家の管理なしに薬用や痩身の目的で用いることは推奨されておらず、いくつかの国では禁止されています。
ククイノキの主な薬用としての使われ方は何ですか。
伝統的には、頭痛、発熱、炎症、消化器の不調(下剤として)、皮膚の症状に対してククイノキが用いられてきました。ククイオイルは民間療法で、関節の痛み、湿疹、日焼けに外用されることが知られています。ただし、これらの伝統的な用法の多くは確かな科学的裏づけを欠いており、この植物の毒性のためにも慎重さが求められる点は強調しておく必要があります。
ククイオイルは化粧品でどのように使われていますか。
ククイオイルは、うるおいを与え肌をやわらげる性質から、ヘアケア製品や化粧品に広く用いられています。乾燥した肌に栄養を与え、湿疹のケアに役立ち、肌と髪の全体的な状態を整えるうえで有効とされています。たとえばフィジーでは、このオイルは化粧品の一般的な原料です。使用は通常は外用であり、外用に関しては安全と考えられています。
ククイノキの使用に禁忌はありますか。
はい。ククイノキは、妊娠中および授乳中の女性、幼い子ども、高齢者、そして肝臓、心臓、腎臓に疾患のある方には禁忌です。また、この植物にアレルギーのある方も使用を避けるべきです。瀉下作用は激しいものになりうるほか、生の種子がもつ毒性は健康にとって重大なリスクとなります。
ククイノキとキャンドルナッツはどう違うのですか。
ククイノキとキャンドルナッツは、同じ植物 Aleurites moluccanus を指す呼び名です。キャンドルナッツは英語の candlenut に由来する呼び方で、ククイノキはハワイ語の kukui にもとづく和名にあたります。いずれもトウダイグサ科の高木である Aleurites moluccanus を指し、油分に富む種子と伝統的な用途で知られる一方、生の状態での毒性でも知られています。
ご注意: 本コンテンツは情報提供を目的としており、医療専門家の助言に代わるものではありません。薬用植物を使用する前に、特に妊娠中、授乳中、または薬を服用中の場合は、医師または専門家にご相談ください。
参考文献と科学的研究
査読済み科学研究 (1)
- PEER2019 Quintao, N. L. M., Pastor, M. V. D., Antonialli, C. S., Silva, G. F., Rocha, L. W., Berte, T. E., … & Bresolin, T. M. B. (2019). Aleurites moluccanus and its main active constituent, the flavonoid 2″-O-rhamnosylswertisin, in experimental model of rheumatoid arthritis. Journal of Ethnopharmacology, 235, 248-254.
補足資料 (4)
- 2022 Hakim, A., & Sumiati, T. (2022). Ethnopharmacology, phytochemistry, and biological activity review of Aleurites moluccana. Journal of Applied Pharmaceutical Science, 12(01), 001-010.
- 2021 De Souza, M. M., da Silva, G. F., Quintao, N. L. M., Rocha, L. W., Berte, T. E., de Oliveira, L. F., … & Cechinel-Filho, V. (2021). Phytochemical Analysis and Antinociceptive Properties of Aleurites moluccanus. Planta Medica, 87(06), 460-468.
- 2015 Hoepers, S. M., de Souza, H. G. M. T., Quintao, N. L. M., da Silva, G. F., Rocha, L. W., Berte, T. E., … & Cechinel-Filho, V. (2015). Topical anti-inflammatory activity of semisolid containing standardized Aleurites moluccana L. Willd (Euphorbiaceae) leaves extract. Journal of Ethnopharmacology, 172, 10-16.
- 2022 De Britto Rosa, M. C., da Silva, G. F., Quintao, N. L. M., Rocha, L. W., Berte, T. E., de Oliveira, L. F., … & Cechinel-Filho, V. (2022). Fatty acids composition and in vivo biochemical effects of Aleurites moluccana (L.) Willd. leaves extract. Journal of Applied Pharmaceutical Science, 12(01), 001-010.
