Hamamelis virginianaは、北アメリカ東部の落葉樹林で下層を占める木本植物である。多くは大型の落葉低木で、ときに幹の多い小高木となる。所属するマンサク科(Hamamelidaceae)は約30属、100種弱の木本からなり、温帯アジア、北アメリカ、アフリカ南部、オーストラリアに断片的に分布する。そのなかでマンサク属Hamamelisは古くから続く系統であり、アメリカマンサクは属内で最も広い連続した分布域をもつ。

このページでは、IPNIとPOWOで確認した正式な分類、計測値をともなう形態の記載、自然分布と生育地、栽培の条件、生物季節学、同属他種および他科の類似種との識別点、化学成分の記述的な概要、歴史と民族植物学の記録、保全状況をまとめる。Hamamelisは、ギリシャ語のhama(同時に)とmelon(果実)に由来する属名で、北米と東アジアに約5種が分布し、開花と結実が同じ枝先で同時に見られることを指す。
Hamamelis virginianaの分類
アメリカマンサクは1753年、リンネが『Species Plantarum』第1巻124ページで記載した種であり、その学名は以後変更されることなく有効名として通用している。一方、科の位置づけは大きく動いた。かつてはマンサク目(Hamamelidales)に置かれていたが、分子系統解析がこの目の枠組みを解体した結果、マンサク科は現在ユキノシタ目(Saxifragales)に含められている。
- 界:植物界 Plantae
- 維管束植物門:Tracheophyta
- 綱:Magnoliopsida
- 目:ユキノシタ目 Saxifragales
- 科:マンサク科 Hamamelidaceae
- 亜科:Hamamelidoideae
- 連:Hamamelideae
- 属:マンサク属 Hamamelis Gronov. ex L.
- 種:Hamamelis virginiana L., Sp. Pl. 1: 124 (1753)
IPNIは原記載をSpecies Plantarum 1: 124 (1753)として登録している。POWOは種内分類群を2つ認めており、北アメリカの分布域全体を占める基準変種Hamamelis virginiana var. virginianaと、メキシコ北東部のコアウイラ州およびヌエボレオン州の山地に限られるHamamelis virginiana var. mexicana (Standl.) C.Laneがそれにあたる。後者は1937年にHamamelis mexicana Standl.という独立種として発表されたもので、現在も種のレベルで扱う文献がある。
同型異名としてはTrilopus virginiana (L.) Raf.(1838年)が認められている。さらに19世紀から20世紀初頭にかけては、アメリカマンサクやその諸形態に結びつけられた名がいくつも流通した。Hamamelis androgyna Walter、Hamamelis corylifolia Moench、Hamamelis dioica Walter、Hamamelis macrophylla Pursh、Lomilis ciliata Raf.などである。北アメリカの研究者が記載したH. virginiana var. angustifolia Nieuwl.、H. virginiana var. orbiculata Nieuwl.、H. virginiana f. parvifolia Fernald、H. virginiana f. rubescens Rehderといった変種名や品種名もあるが、現在の基準的なチェックリストではいずれも認められていない。
属名のHamamelisは古代ギリシャ語のhamamelisにさかのぼる。古典期の著者はこの語を果実のなる木に用いたが、その正体は判然とせず、ビワかナナカマドの類だったと推定されている。今日一般的な解釈は、この語をhama(共に)とmelon(リンゴ、あるいは木になる果実)に分解するもので、同じ枝に花と果実が同時につく状態を指す。北アメリカ産のアメリカマンサクはその状態をとりわけ明瞭に示す。種小名virginianaは、ヨーロッパへ最初の標本が送られた植民地時代のバージニアに由来する。
形態的特徴
落葉性で、高さは多くの個体群で3から5メートルにおさまり、条件のよい場所では8メートルに達する。10メートル近い記録も例外的に知られる。幹は短く、単幹の個体はまれで、輪郭の不規則な開いた株立ちをつくる。枝はジグザグに互生し、内側では斜上、先端付近では水平に伸びる。この枝ぶりが光をよく通す疎な樹冠をかたちづくる。樹皮は若木では滑らかな灰色から灰褐色で、樹齢を重ねるとやや鱗片状になり浅く裂ける。当年枝には赤褐色の毛が密生するが、2年目にはほとんど失われる。樹高の伸びは年間10から20センチメートルにとどまり、成熟した森林では樹齢100年を超える個体が記録されている。
葉
葉は互生し、枝の左右2列に並ぶ。単葉で落葉性、托葉は早くに落ち、枝には痕跡だけが残る。葉身は倒卵形から広楕円形で、長さ7から15センチメートル、幅5から10センチメートル、先端は丸いか鈍い。識別に最も役立つのは基部である。左右がはっきり非対称で、片側が葉柄への付き方でもう一方より低い位置から始まり、やや心形になる個体も多い。縁は波状の鈍鋸歯で、幅の広い丸みを帯びた歯が並ぶため、輪郭全体がうねって見える。葉脈は羽状で、側脈は5から7対、縁に向かって平行に走り、表面ではくぼみ、裏面では隆起する。表面は濃緑色でつやがなく、裏面は淡く、脈上に星状毛がある。葉柄は長さ5から15ミリメートルで毛がある。秋には落葉に先立って葉全体が均一な黄金色に染まる。
花
花は当年枝の葉腋に短い集散花序をつくり、1つの軸に2個から4個ずつ、枝に沿って点々とつく。萼片は4枚で、内側は黄緑色、外側は赤褐色の毛におおわれる。花弁は4枚、細いリボン状で長さ10から20ミリメートル、色は淡黄色から濃い黄色まで幅があり、まれに基部が赤みを帯びる。つぼみの中では花弁がらせん状に巻かれており、開花とともにほどけて伸びる。雄しべは4本と短く、葯は弁状の蓋が開いて花粉を出す。雄しべと交互に、著しく肥大した仮雄しべが4本あり、これが蜜を分泌する器官として働く。子房は2心皮からなり半下位で、短く左右に開いた花柱を2本のせる。香りはかすかな甘い匂いで、気温の上がる時間帯にとらえやすい。気温が下がると花弁は再び内側に巻き込み、暖まると開く。この動きは開花期のあいだ何度も繰り返される。
果実と種子
果実は長さ10から14ミリメートルの卵形の木質蒴果で、有毛、基部は宿存する花托筒に包まれ、頂部には乾いた花柱に由来する2本の角状の突起が残る。開花からおよそ12か月をかけて成熟するため、新しい花と前季の熟した蒴果が同じ枝に並ぶ。裂開は爆発的である。内果皮の各層が不均一に乾燥することで張力が高まり、限界に達したところで果弁が一気に離れて種子を弾き飛ばす。1つの蒴果には長楕円形の種子が2粒入り、長さ5から9ミリメートル、黒く光沢があり、種皮は硬く、胚乳は油分に富む。飛距離は数メートルにおよび、母株から9メートル近い地点まで届いた野外記録がある。
根と茎
根系は分散型で、主根の発達は弱く、側根が横に強く伸びる。深さは地表から60センチメートルほどまでに集中し、厚い落葉層をもつ森林土壌という自生環境によく合った構造である。茎の基部は不定芽を出す能力が高く、株元からも浅い根からも新しいシュートが立ち上がる。株立ち状の樹形も、伐採や物理的な損傷を受けたあとの回復の速さも、この性質に支えられている。一次枝の髄は充実しており、樹皮には淡色の皮目が並ぶ。冬芽は裸芽で、保護鱗片を持たず、毛におおわれただけの状態で露出している。
分布と生育地
アメリカマンサクは北アメリカ東部の原産である。カナダではオンタリオ州、ケベック州、ニューブランズウィック州、ノバスコシア州に分布する。アメリカ合衆国ではグレートプレーンズ以東のほぼ全域を占め、北はメーン州とミネソタ州から、南はフロリダ州、テキサス州東部、ルイジアナ州にまで及ぶ。その内側にはアーカンソー州、アイオワ州、アラバマ州、イリノイ州、インディアナ州、ウィスコンシン州、ウェストバージニア州、オクラホマ州、オハイオ州、ケンタッキー州、サウスカロライナ州、ジョージア州、テネシー州、ノースカロライナ州、バージニア州、ペンシルベニア州、ミシガン州、ミシシッピ州、ミズーリ州が含まれ、北東部の小さな州もほぼすべてが分布域に入る。メキシコでは変種mexicanaがコアウイラ州とヌエボレオン州の山地林に隔離分布し、これがアメリカ大陸におけるマンサク属の分布の南限にあたる。
典型的な生育地は、カエデ類、カバノキ類、オーク類、ブナが優占する落葉樹林や混交林の下層である。半日陰の斜面、岩がちな渓谷、森林に縁どられた渓流沿いに多く、南東部では砂質の高まりに常緑樹が茂るハンモックと呼ばれる地形にも現れる。垂直分布は海抜0メートルから約1500メートルに及ぶ。土壌は酸性からやや酸性で、湿り気があり、深く、有機物と落葉層に富む場所を好むが、斜面上部のより乾いた土壌にも耐える。自生域の気候は大陸性温帯から湿潤温帯で、冬の冷え込みは厳しく、木質部に目立った傷みを残さずに低温を越す。
自生域の外では、ヨーロッパと東アジアの植物園や庭園で200年以上前から栽培されてきたが、侵略的な挙動は記録されていない。成長が遅いこと、酸性の森林土壌に依存すること、種子の散布距離が短いことが、自然環境へ逃げ出す力を抑えていると考えられる。
栽培
種子繁殖には二重休眠の打破が必要である。蒴果は爆発的に裂開する前、初秋のうちに採取しなければならない。種子は温暖な期間を過ごしたあとに低温期間を経てはじめて発芽するため、出芽は播種の翌々春になるのが普通である。実生の生育は遅く、1年目に50センチメートルを超えることはまれである。初夏に採った半木質の挿し木でも増やせるが、発根率は安定しない。観賞用品種、とりわけ交雑種Hamamelis × intermediaに由来するものでは、H. virginianaを台木とする接木が苗木生産の標準手法であり、アメリカ産のアメリカマンサクがもつ樹勢と耐寒性が利用されている。
栽培条件としては、半日陰でも日なたでも育つが、少なくとも数時間の直射日光を受ける場所のほうが花付きは密になる。土壌は酸性でpH4.5から6.5、湿り気があり、水はけがよく、有機物に富むことが望ましい。石灰質の用土と長期間の滞水は、アメリカマンサクが受けつけない2つの条件である。年降水量は800から1500ミリメートルが平年よく分散して降る環境が適し、落葉や樹皮のマルチングは土壌の湿りと酸度の維持に役立つ。植栽間隔は、成木の樹冠が数メートルの直径になることを見込んで取る。剪定は晩冬に枯れ枝や交差枝を抜く程度にとどめる。強い切り戻しは株立ちという本来の樹形を損なうためである。
関連する生物のうち最も目につくのは、葉の表面に円錐形の虫こぶを作るアブラムシHormaphis hamamelidisで、外観は目立つものの樹勢への影響はほとんどない。食葉性の幼虫としてはAlsophila pometariaやMalacosoma americanumが散発的に現れる。病害では、夏の終わりのうどんこ病、Phyllosticta hamamelidisによる葉斑病、排水の悪い土壌や樹勢の衰えた株に出るArmillaria melleaの根腐れが知られる。
開花の開始は実生では6年目から10年目、接木苗ではそれより早い。北アメリカの生産現場では、枝と樹皮の収穫は落葉後の休眠期に行われ、区画を輪番で回しながら萌芽による更新にゆだねる方式が取られてきた。19世紀以来この加工を集中的に担ってきたコネチカット州で定着した手法である。
生物季節学(フェノロジー)
開花は北半球の秋から初冬にかけてで、10月から11月に集中し、南方の個体群では12月まで続く。高緯度地域では、葉が黄色く色づき始める9月のうちに最初の花が開くこともある。同じ森を構成する他の木本植物の暦から大きく外れたこの時期こそ、アメリカマンサクを特徴づける生物季節学上の性質である。開花期が数週間にわたって延びるのは、花の項で述べた花弁の可逆的な巻き込みによる。
送粉を担うのは、花の供給が最小になる季節に活動する昆虫である。記録された訪花者には複数の科のハエ目と小型のチョウ目が含まれる。温帯林の秋の送粉を扱った研究は、夜間の訪花の一部を、飛翔前に筋肉の震えで体温を上げることができるヤガ科の夜行性のガに帰している。1花あたりの蜜量は少ない。しかし、この時期には競合する花がほとんどないため、報酬の乏しさは埋め合わされる。
結実は翌年の秋に完了する。受精後、果実の発達は冬のあいだ緩やかに進み、春から夏にかけて加速し、開花からおよそ12か月後に蒴果が成熟する。一次散布は弾道的で、種子は数メートル先まで投げ出される。続く二次散布では、種子の栄養組織に引き寄せられたアリ、および小型のげっ歯類や種子食の鳥が種子を運び、一部を地中に埋める。発芽は先に述べたとおり遅れ、通常は2回目の好適な季節を待つ。
近縁種と誤認
マンサク属は種数が少なく、北アメリカと東アジアに隔離分布する。基準的なチェックリストが認めるのは、日本のH. japonica、中国中南部のH. mollis Oliv.、アメリカ合衆国中南部のH. vernalis Sarg.、そしてアメリカマンサクH. virginianaである。これに2006年、ミシシッピ州南部の個体群にもとづいて記載されたH. ovalis S.W.Leonardが加わるが、この種の扱いは分類データベースによって一定しない。園芸交雑種Hamamelis × intermedia Rehderはアジア産の2種の交配に由来し、流通する観賞用品種の大半の起源となっている。
野外で最も多い取り違えはH. vernalisとの混同であり、多くの場合は開花期で決着がつく。オザーク地方のこの種は1月から3月、冬の終わりに花を開くのに対し、H. virginianaは秋に咲く。H. vernalisの花弁はかなり短く、基部が赤みや橙色を帯びることが多い。葉の裏面も白っぽく粉を吹いたようになる。H. ovalisは葉がより大きく丸みを帯び、花弁は属内で唯一の赤紫色を示すが、自然分布はミシシッピ州南部の狭い範囲に限られる。アジアの2種は冬に開花し、アメリカ大陸では栽培下にしか現れない。
属の外での古典的な混同相手はCorylus americana(アメリカハシバミ)である。倒卵形の輪郭、鈍鋸歯の縁、非対称な基部と、葉だけを見れば紛らわしい。ただし生殖器官を見れば区別はすぐつく。ハシバミは冬の終わりに垂れ下がる雄花序をつけ、果実は葉状の総苞に包まれるのであって、リボン状の黄色い花弁をもつ花はつけない。同じ科のFothergilla属も葉つきが似るが、花序は雄しべだけからなる白っぽい密な穂で、花弁を欠き、春に現れる。実際のところ、斜めにずれた葉の基部、幅広く丸い鋸歯、そして秋に開く4枚のリボン状の黄色い花弁という組み合わせは、この地域の他のどの木本植物にも重ならない識別形質である。
植物化学
アメリカマンサクの化学的な輪郭はフェノール化合物、なかでも加水分解性タンニンが支配する。指標成分はハママリタンニンで、ハママロースのガロイルエステルにあたり、植物化学の文献ではこの植物の名を冠した化合物として扱われる。これに置換度の異なるガロイル-ハママロース類と、没食子酸を5から10単位もつグルコース系のガロタンニン類が伴う。縮合型のフラクションはプロアントシアニジン類で、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンを構成単位とするプロシアニジンとプロデルフィニジンからなり、樹皮からはガロイル化誘導体や安息香酸エステルも報告されている。組成分析では、加水分解性タンニンが総ポリフェノールのおよそ5分の4を占め、残りをプロアントシアニジンが分け合う。
これらの成分が器官ごとに大きく偏る点は、アメリカマンサクでとくによく記録されている特徴の一つである。液体クロマトグラフィーによる定量では、樹皮のハママリタンニン濃度は葉の数十倍、茎の100倍近くに達する。総タンニン含量として報告される値は樹皮で8から12パーセント、葉で3から10パーセントの範囲にあり、採取時期と材料の産地によって変動する。
タンニン類と並んで配糖体フラボノイドが見られ、アストラガリンをはじめとするケンペロール誘導体、イソクエルシトリン、クエルシトリン、そして葉に多いミリセチンが挙げられる。遊離型および結合型のフェノール酸がこれを補い、没食子酸とカフェオイルキナ酸類が代表格である。揮発性のフラクションは小さく、ヘキセノールなどの青葉成分、オイゲノール、微量のサフロールを含む。なお、タンニン類は揮発しないため、枝から水蒸気蒸留で得られる留出液にはほとんど移行しない。一方、樹皮からの含水アルコール抽出物ではタンニン画分が主体となる。
歴史と民族植物学
アメリカマンサクは北アメリカ東部の民族誌のなかで大きな位置を占める。18世紀から19世紀の調査記録によれば、イロコイ族、オセージ族、ポタワトミ族、モヒガン族といった人々が樹皮と葉を湿布や浴用に仕立てて皮膚に当て、材は別の日用の用途にも使われた。イギリス系入植者は植民地時代を通じてこうした慣習の一部を自分たちの手当ての習わしに取り込んでおり、この受け渡しから、北アメリカの民間の書物に本種が繰り返し登場する流れが生まれた。
英名のwitch hazelは、見た目ほど奇異な由来をもたない。前半の語は中英語のwicheまたはwychにさかのぼる。しなやかという意味で、枝の曲がりやすい木に用いられた語である。魔女を指す語とは音が近づいただけで、語源上のつながりはない。後半の語は、葉がヨーロッパのハシバミに似ることによる。枝が柔軟であることから、入植者たちはこれを地下水を探す占い棒として使った。ヨーロッパから持ち込まれた習慣が新大陸に移植されたわけであり、魔術との誤った結びつきはこれによって強まった。
学名を確定するにあたってリンネが下敷きにしたのは、バージニア植民地の植物相を扱ったグロノビウスの著作だった。1840年代にはコネチカット州で商業的な蒸留が始まり、トーマス・ニュートン・ディキンソンの名がこれに結びついた。同州はその後、留出液の世界的な生産の中心地となり、現在までその位置を保っている。20世紀を通じてこの製品は複数の国の公定の薬局方に収載され、アメリカマンサクは1世紀半以上にわたって独自の産業チェーンを絶やさなかった数少ない北アメリカ産の木本植物の一つとなった。
アメリカマンサクは文学の記録にも残る。自然文学者ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、11月に黄色い花に出会ったことを日記のなかで何度も書きとめた。ニューイングランドの自然文学では、以後この植物が繰り返し取り上げられている。
保全状況
IUCNレッドリストはHamamelis virginianaを軽度懸念(LC)に分類している。この評価は、分布域の広さ、下層植生の群落における個体数の多さ、そして有意な個体群の減少が見られないことを根拠としている。アメリカマンサクはワシントン条約(CITES)のいずれの附属書にも掲載されておらず、分布する国々の国内の絶滅危惧種リストにも載っていない。
記録されている圧力は局所的で間接的なものである。最も影響が大きいのはオジロジカOdocoileus virginianusによる強い採食で、この動物の個体数はアメリカ合衆国東部の広い範囲で大きく増加し、分断された森林では木本の下層植生の更新を抑え込んでいる。成熟林の農地化や都市化は好適な生育地を減らし、枝の商業的な収穫も局所的な圧力となるが、後者は強い萌芽力に支えられた輪伐の方式で行われている。
同属の北アメリカ産の別種では状況が異なる。ミシシッピ州南部の少数の個体群に限られるH. ovalisは占有面積がきわめて小さく、アメリカ合衆国南東部の希少植物相の調査では注意を要する分類群として扱われている。
豆知識
- 開いたばかりの花と前季の熟した蒴果が同じ枝に同時に並ぶ。温帯の木本植物では珍しい状態で、果実と花が共にあることを指す属名の由来になったと考えられている。
- 蒴果が裂ける音は耳で聞き取れる。熟した果実を紙袋に入れて保管した採集者は、パチンという破裂音と、種子が袋の内側に当たる音が数日続くと報告している。
- リボン状の花弁は寒さに対する可逆的な保護機構として働く。気温が下がると内側へ巻き込み、暖まると再び伸びるため、一つの花が晩秋の数週間にわたって機能し続ける。
- アブラムシHormaphis hamamelidisは葉の表面に円錐形の虫こぶを作り、低地の個体群ではアメリカマンサクとBetula nigraのあいだで世代を交代させ、夏の終わりに元の宿主へ戻る。
- 東アジアと北アメリカ東部に分断されたマンサク属の分布は、Liquidambar属やLiriodendron属にも見られるパターンであり、より連続していた第三紀の大陸植物相にさかのぼるとされる。この見方は本群の系統解析と生物地理学的解析によって支持されている。
ご注意:本コンテンツは情報提供を目的としており、医療専門家の助言に代わるものではありません。薬用植物を使用する前に、特に妊娠中、授乳中、または薬を服用中の場合は、医師または専門家にご相談ください。
参考文献と科学研究
引用文献9件をすべて見る
査読済み科学研究 (2)
- DOI1988 Vennat, B., Pourrat, H., Pouget, M. P., Gross, D., Pourrat, A. Tannins from Hamamelis virginiana. Planta Medica, 54(5), 454-457. 1988. ↗
- DOI2010 Xie, L., Yi, T. S., Li, R., Li, D. Z., Wen, J. Evolution and biogeographic diversification of the witch-hazel genus. Molecular Phylogenetics and Evolution, 56(2), 675-689. 2010. ↗
補足資料 (7)
- 1997 Flora of North America Editorial Committee. Hamamelis virginiana L. Flora of North America North of Mexico, vol. 3. Oxford University Press, New York. 1997.
- International Plant Names Index. Hamamelis virginiana L., Sp. Pl. 1: 124 (1753). Royal Botanic Gardens, Kew. ↗
- IUCN. Hamamelis virginiana. The IUCN Red List of Threatened Species. Least Concern (LC).
- 2006 Leonard, S. W. A new species of witch-hazel (Hamamelis: Hamamelidaceae) apparently endemic to southern Mississippi. Sida, 22(2), 849-856. 2006.
- Linnaeus, C. Species Plantarum, vol. 1, p. 124. Laurentius Salvius, Stockholm. 1753.
- Plants of the World Online. Hamamelis virginiana L. Royal Botanic Gardens, Kew. ↗
- Standley, P. C. Studies of American plants. Publications of the Field Museum of Natural History, Botanical Series, 17, 192. 1937.
