Dipsacus fullonum L. / オニナベナは、リンネによって記載されたスイカズラ科(Caprifoliaceae)の二年草です。ユーラシアと北アフリカを原産とし、世界各地に広がったこの植物は、民間医療での利用とともに、織物産業で果たした歴史的な役割でも知られています。小さなラベンダー色の花が、とげのある苞に囲まれた円錐形の頭花の上に咲き、ひと目でそれとわかる花序をつくります。葉は披針形で、中央脈に沿って小さなとげが並びます。

伝統医学において、オニナベナは皮膚のトラブルから体内の不調まで、さまざまな症状に用いられてきました。イリドイドやフェノール化合物に富む植物化学的組成は、主に実験室での試験で観察された抗炎症作用、抗酸化作用、抗菌作用と関連づけられています。近年の研究ではこうした民族植物学的用途の一部が調べられていますが、その結果はまだ人を対象とした対照臨床試験で確認されていません。薬用として最も重視されるのは根で、収穫したのち、生理活性成分を引き出すためにさまざまな方法で調製されます。近年、ライム病への対策になるとして注目を集めたのもこの根ですが、この主張には臨床的な裏付けがなく、本記事では必要な慎重さをもって取り上げます。
一般名と国際名
- 日本語: オニナベナ、チーゼル
- イタリア語: cardo selvatico、scardaccione selvatico
- 英語: fuller’s teasel、wild teasel
- スペイン語: cardencha、cardo de cardar、cardo silvestre
- ドイツ語: Weberkarde、Wilde Karde
- フランス語: cardère à foulon、cardère sauvage
- ポルトガル語: cardo-penteador、cardo-silvestre、dipsaco
学名上の異名
Dipsacus sylvestris Huds.は、Dipsacus fullonum L.の異名として最もよく引用される学名です。2つの名前が併存しているのは、分類が時代とともに変わってきたことの表れですが、現在では多くの植物学的権威がDipsacus fullonum L.を正名として認めています。古い文献には他の異名も見られますが、根を対象とした実験室研究の一部を含め、今でも最も一般的なのはDipsacus sylvestrisです。
科:スイカズラ科(Caprifoliaceae)
Dipsacus fullonumが属するスイカズラ科(Caprifoliaceae)は、低木、つる植物、草本を含む多様な顕花植物のグループで、スイカズラの仲間(Lonicera)やカノコソウの仲間(Valeriana)もここに含まれます。Dipsacus属は長いあいだマツムシソウ科(Dipsacaceae)に分類されていました。しかし系統学的研究によってスイカズラ科に含められるようになり、この再分類は植物どうしの進化的な関係への理解が深まったことを反映しています。この科には観賞用や薬用として価値のある種が多く、一般に目を引く花とさまざまな形の果実をもちます。
茶や調製に用いる部位
- 根
- 葉
民族植物学的・伝統的用途
以下に挙げる用途は、この植物の伝統的・民間的な記録に基づくもので、対照臨床試験では確認されていません。
- 黄疸:ヨーロッパの伝統的な記録によるもので、現在では医師の診察を要する徴候とされています。
- 肝機能・腎機能:ヨーロッパの伝統的な植物療法における補助として。
- 関節痛・筋肉痛:民間の記録によるもの。
- 感染症:近年の民間利用ではライム病も含まれますが、対照臨床試験による裏付けはありません。
- 傷の手当て:伝統的な外用として。
- 解毒(デトックス):民間の植物療法に特有の考え方。
- にきび、乾癬、いぼなどの皮膚の悩み:伝統的な外用として。
- 骨と腱:中国の伝統では、主に近縁種のDipsacus asperについて伝えられてきた用途。
薬用特性
- 血圧降下作用 (血圧を下げるという伝統的な記録。臨床的な裏付けはない)
- 健胃作用 (消化と食欲のための苦味剤としての伝統的な用途)
- 抗アセチルコリンエステラーゼ作用 (in vitroで観察された酵素阻害。根のエキスでより強い)
- 抗炎症作用 (伝統的な記録があり、実験室研究でも示唆されている)
- 抗菌作用 (実験室で観察された活性。特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と大腸菌(Escherichia coli)に対して)
- 抗酸化作用 (実験室での試験におけるフリーラジカルの中和。葉のエキスでより強い)
- 神経保護作用 (実験室での試験に基づく仮説。臨床的な裏付けはない)
- 鎮静作用 (リラックス効果に関する伝統的な記録。臨床的な裏付けはない)
- 発汗作用 (発汗を促すという伝統的な記録)
- 免疫調整作用 (免疫系への作用に関する伝統的な記録。臨床的な裏付けはない)
- 利尿作用 (尿量を増やすという伝統的な記録)
これらの作用の大部分は、実験室で試験された抽出物について報告されたものです。in vitro試験では、根と葉のエキスがライム病の原因菌であるBorrelia burgdorferiに対しても評価されていますが、この結果は患者での有効性が証明されたことを意味しません。
フィトケミカルプロファイル
- アピゲニン(誘導体)
- イリドイド
- カフェオイルキナ酸類(クリプトクロロゲン酸、クロロゲン酸、ジカフェオイルキナ酸類、ネオクロロゲン酸)
- カントレオシド
- シルベストロシドIII
- スウェロシド
- フラボン類
- ルテオリン(誘導体)
- ロガニン
- ロガニン酸
調製方法(茶、チンキ、エキス)
- 乾燥エキス
- 湿布(パップ)
- 浸剤(葉)
- 煎剤(根)
- チンキ
- 流エキス
煎剤、エキス剤、チンキなどの内服用の形態には、安全性試験に裏付けられた標準用量がないため、資格のある専門家の指導のもとで用いる必要があります。一方、葉の浸剤と湿布は、伝統的には主に皮膚への外用で用いられてきました。
他の植物との相乗効果
ライム病に関連する民間の組み合わせ
ライム病に関連する一部の民間のプロトコルでは、オニナベナがセンシンレン(Andrographis paniculata)やキャッツクロー(Uncaria tomentosa)と組み合わされます。そのねらいは、3つの植物それぞれに帰せられる抗炎症作用と免疫調整作用を足し合わせることだとされています。これは対照臨床試験による裏付けのない伝統的・民間的な記録であり、こうした組み合わせのいずれも、医師が処方した抗生物質に代わるものではなく、その服用を遅らせる理由にもなりません。これらの植物にはそれぞれ妊娠中を含む固有の禁忌があるため、組み合わせる前には専門家の指導が欠かせません。
関節のための伝統的な組み合わせ
関節を対象とした植物療法では、オニナベナはデビルズクロー(Harpagophytum procumbens)やセイヨウシロヤナギ(Salix alba)と組み合わされ、関節炎やリウマチ性の痛みなどに伝統的に用いられてきました。オニナベナのイリドイド、デビルズクローのイリドイド配糖体、ヤナギのサリチル酸類をまとめ、痛みと炎症に幅広く働きかけるという考え方です。ただし、この相乗効果が臨床試験で検証されたことはありません。セイヨウシロヤナギはサリチル酸類を含むため、抗凝固薬を使用している人やアセチルサリチル酸(アスピリン)にアレルギーのある人は注意が必要で、デビルズクローは胃潰瘍のある人には勧められません。
レシピと利用法
内服用の根の煎剤
材料:乾燥させて刻んだオニナベナの根と、ろ過した水。分量の比率は医療専門家の指示に従います。
作り方:根を冷水に入れて火にかけ、沸騰したら火を弱めて10分から15分ほど静かに煮立たせてから、こします。この煎剤は伝統的に、消化を助ける苦味剤として、食欲を促すために、また黄疸を含む肝臓の不調に用いられてきました。ただし黄疸についてはヨーロッパの植物療法の記録であり、黄疸は病気の徴候で直ちに医師の診察を要するため、現在では慎重な扱いが求められます。内服に関する十分な安全性データがないため、量と頻度は一人ひとりに合わせて決める必要があります。医療専門家に相談してください。
外用のための葉の浸剤
材料:乾燥させたオニナベナの葉大さじ1杯、熱湯250 ml。
作り方:葉をカップに入れて熱湯を注ぎ、ふたをして10分間浸出させたら、こして冷まします。この液は伝統的に、にきびや軽い炎症のある肌を洗うローションとして、また乾癬の患部や小さな浅い傷に当てる湿布として、1日2回から3回、患部に用いられてきました。まず皮膚の狭い範囲で試し、深い傷や感染した傷には使わないでください。そうした傷には専門家の診察が必要です。
オニナベナのチンキ
材料:刻んだオニナベナの生の根1に対し、70%の穀物アルコール(または品質のよいウォッカ)2の割合。
作り方:根をガラス瓶に入れてアルコールで完全に覆い、しっかりふたを閉めて冷暗所で4週間から6週間漬け込みます。その間は毎日瓶を振り、最後にこして遮光ガラス瓶で保存します。民間の植物療法では、このチンキは伝統的に全身の補助として、特に関節の不調やいわゆる解毒に用いられてきましたが、内服量は安全性試験に基づいて標準化されておらず、水での希釈も含めて医療専門家が決める必要があります。アルコールを含むため、子ども、妊娠中・授乳中の人、アルコールを避けている人には適しません。
上記の調製法は伝統的な記録に基づくものであり、専門家の助言に代わるものではありません。内服される前に、本記事に記載されている禁忌および相互作用をご確認ください。
関連する療法
西洋ハーブ療法
現代の西洋ハーブ療法では、オニナベナは免疫系を支えるとされる働きと、伝統的に記述され実験室での試験でも観察された抗炎症作用によって評価されています。一部のハーバリストは、関節炎や線維筋痛症など炎症を伴う慢性的な状態にこの植物を挙げていますが、その使用は臨床試験で評価されていません。根の標準化エキスを用いる場合、その目的は有効成分、特にイリドイドの含有量をロット間で一定に保つことにあります。この流れの一部ではライム病の民間プロトコルにこの植物が取り入れられてきましたが、この主張には対照臨床試験の裏付けがなく、決して抗生物質による治療の代わりにしてはなりません。現在の研究は、根と葉のエキスをBorrelia burgdorferiに対して用いたin vitro試験に限られています。この伝統において、本植物は体のバランスと機能を取り戻す助けになるとされる総合的な強壮剤として説明されています。
伝統中国医学(TCM)
伝統中国医学で続断(Xu Duan)と呼ばれる生薬は、Dipsacus fullonumにあたるものではありません。続断は、同じ属のアジア産の種であるDipsacus asper(Dipsacus asperoidesとも表記される)の根に由来します。以下の記録はこの種に関するもので、ヨーロッパのオニナベナにそのまま当てはまることは証明されていません。中国の本草学では続断を肝と腎を補う薬に分類し、骨や腱を強くする目的で、腰痛や膝の弱り、骨折の回復に用います。また、血のめぐりをよくして痛みを和らげる働きがあるともされています。古典的な文献には、子宮出血や流産のおそれがある妊娠に用いた記述もありますが、これはあくまで伝統医学の専門家による処方の範囲でのことであり、医師の指導なしに同属のいずれかの植物を妊娠中に使用してよい根拠にはなりません。性質は苦くやや温とされ、肝と腎の経絡に帰経し、伝統的にはこれらの臓の陽を補う薬に含められます。
禁忌と副作用
オニナベナには人を対象とした十分な安全性試験がないため、どのような使用にも慎重さと専門家による経過観察が必要です。持病のある人や薬を服用している人は、好ましくない相互作用や既存の症状の悪化を避けるため、何らかの製剤を使い始める前に医療専門家に相談してください。
ライム病に関する注意
オニナベナ(Dipsacus fullonum)は近年、代替医療の分野でライム病の治療法とされて人気を集めていますが、この主張には対照臨床試験による裏付けがなく、証明されていない伝統的・民間的な用途として扱うべきもので、ライム病に対する医学的な抗生物質治療の代わりには決してなりません。ライム病は医学的な診断と治療(通常は抗生物質)を必要とする深刻な細菌感染症であり、オニナベナの使用によってこの治療を置き換えたり遅らせたりしてはなりません。
具体的な禁忌
医師の指導なしに妊娠中・授乳中に使用しないでください。これらの時期における植物の安全性について結論の出た研究がないため、避けるのが最も慎重な対応です。十分な安全性試験がないことから、資格のある専門家の指導のもとでのみ使用してください。同じことは子どもにも当てはまり、子どもへの使用はこれまで評価されておらず、アルコールを含むチンキは適していません。念のため、重い腎結石、胆道閉塞、大きな胆石のある人は、症状を悪化させるおそれがあるためオニナベナを避けるべきです。利尿作用が考えられることも、一部の臨床状況では問題になりえます。スイカズラ科の植物、またはこの属がかつて分類されていたマツムシソウ科(Dipsacaceae)の植物にアレルギーがあるとわかっている人は注意してください。
考えられる副作用
オニナベナで報告されている副作用はたいてい軽いものですが、研究が少ないため、その頻度を確かに見積もることはできません。特に多量に用いた場合に吐き気や下痢などの胃腸の不快感が現れることがあり、めまいや発疹などのアレルギー反応、外用では局所の刺激が生じることもあります。何らかの副作用が現れたら使用を中止して医療専門家に相談してください。特に使い始めは経過を見守ることが大切です。
薬物相互作用
利尿作用が考えられるため、オニナベナは利尿薬の作用を強め、電解質の乱れを招くおそれがあります。薬を代謝する肝臓の酵素にこの植物がどう影響するかはわかっていないため、肝臓で代謝される薬にも注意が必要で、それらの効果や毒性が変わる可能性があります。抗凝固薬を使用している人も、理論上この植物が血液凝固に影響する可能性があるため注意してください。降圧薬や鎮静薬を使っている人も同様で、伝統的にこの植物には血圧を下げる作用と鎮静作用があるとされているため、作用が重なる理論上のリスクがあります。現在受けている治療にオニナベナを併用する前には、必ず医師または薬剤師に相談してください。
豆知識
かつての織物での利用
オニナベナは、織物産業で利用されてきた歴史でも知られています。苞が硬い乾燥した頭花を枠に取り付けて毛織物の表面をこすり、けばを立てて整えることで、布をより柔らかく均一に仕上げました。金属製の器具がこの役割を担うようになるまで、この工程は高品質な織物の生産に欠かせないものでした。種小名のfullonumと英名のfuller’s teaselは、羊毛を縮絨して厚みを出し、多くの場合この仕上げも担っていた縮絨職人(英語でfullers)にちなんでいます。織物の仕上げには苞が反り返った栽培型が好まれ、多くの植物学者はこれをDipsacus sativus(和名ラシャカキグサ)として扱っています。
昆虫のわな
オニナベナの無柄の葉は基部で対ごとに合着し、茎のまわりに雨水をためる杯のような形をつくります。この特徴が属名Dipsacusの由来で、ギリシャ語で渇きを意味するdipsaに基づいています。この杯は小さな昆虫のわなとして働くことがあり、昆虫はたまった水の中でおぼれてしまいます。この植物が本当に食虫植物といえるかについては議論がありますが、2011年に発表された実験では、植物に昆虫を与えて成長と種子の生産を追跡した結果、分解した昆虫から養分を利用している可能性が示唆されました。これは栄養の乏しい土壌で有利に働くと考えられます。
よくある質問
オニナベナはライム病に効果がありますか?
臨床的な証明はありません。ライム病へのオニナベナの使用は植物療法の一部の流派で広まっていますが、この主張には対照臨床試験による裏付けがありません。現在の研究は、根と葉のエキスをBorrelia burgdorferi菌に対して用いたin vitro試験に限られています。ライム病は医学的な診断と治療(通常は抗生物質)を必要とする深刻な細菌感染症であり、オニナベナがこの治療を置き換えたり遅らせたりすることがあってはなりません。
オニナベナの根はどのように調製しますか?
根は通常、煎剤またはチンキとして調製され、いずれも植物の生理活性成分を濃縮する方法です。煎剤では乾燥させた根を水で10分から15分煮出して成分を抽出し、チンキでは生または乾燥の根を穀物アルコールに数週間漬け込みます。内服に関する十分な安全性データがないため、量と頻度は医療専門家が決める必要があります。
オニナベナは妊娠中や授乳中に使用できますか?
医師の指導なしに妊娠中・授乳中に使用しないでください。これらの時期における植物の安全性について結論の出た研究がなく、避けるのが最も慎重な対応です。妊娠中の続断(Xu Duan)の使用に触れた中国医学の記録は別の種であるDipsacus asperに関するもので、妊婦がオニナベナを使用してよい根拠にはなりません。
オニナベナと中国の続断は同じ植物ですか?
いいえ、同じ属に属してはいますが別の植物です。伝統中国医学の続断(Xu Duan)はアジア産の種Dipsacus asperの根であり、オニナベナ(Dipsacus fullonum)はユーラシアと北アフリカの原産です。そのため、続断の伝統的な用途をオニナベナにそのまま当てはめることはできません。
オニナベナはマリアアザミと関係がありますか?
いいえ。マリアアザミ(Silybum marianum)はキク科(Asteraceae)の別の植物で、オニナベナ(Dipsacus fullonum)はスイカズラ科(Caprifoliaceae)に属します。とげのある植物の俗名は複数の種に使われることが多いため、学名を確認すれば種や製品の取り違えを防げます。
オニナベナは侵略的外来種とされていますか?
はい。北アメリカなど、本来の分布域以外の多くの地域で、オニナベナは侵略的な種とされています。密な群落をつくって在来の植生を押しのけ、地域の生態系を変えることがあります。多くの保護区で、その拡散の抑制が課題となっています。
ご注意: 本コンテンツは情報提供を目的としており、医療専門家の助言に代わるものではありません。薬用植物を使用する前に、特に妊娠中、授乳中、または薬を服用中の場合は、医師または専門家にご相談ください。
参考文献
- PMC2020 Oszmiański J, et al. Roots and Leaf Extracts of Dipsacus fullonum L. and Their Biological Activities. Plants (Basel). 2020.
- PMC2023 Skała E, Szopa A. Dipsacus and Scabiosa Species-The Source of Specialized Metabolites with High Biological Relevance: A Review. Molecules. 2023.
- PMC2011 Liebold T, et al. Growth inhibiting activity of lipophilic extracts from Dipsacus sylvestris Huds. roots against Borrelia burgdorferi s. s. in vitro. Pharmazie. 2011.
- PMC2022 Saar-Reismaa P, et al. Extraction and Fractionation of Bioactives from Dipsacus fullonum L. Leaves and Evaluation of Their Anti-Borrelia Activity. Pharmaceuticals (Basel). 2022.
- PMC2011 Shaw PJ, Shackleton K. Carnivory in the teasel Dipsacus fullonum: the effect of experimental feeding on growth and seed set. PLoS One. 2011.
